生産地から


「今年のキャベツは大きいぞー」
小谷村、南小谷駅の東側山裾に広がる「伊折」集落で暮らす伊折農業生産組合の坂井昭十さん(80)は開口一番笑顔でこう言う。
今年も雪中キャベツの時期が近づき、産地である同所を訪問したのは12月16日。例年になく冬の訪れは遅く、この日も雪の無い道を松本から2時間ほどで同所へ到着した。
元々この「伊折」地区は養蚕と稲作が盛んで、当時を偲ぶ古民家が点在している山間地の原風景を物語るような集落。今は雪中キャベツの他にはミニトマトを栽培したり、棚田が中心の水田を、主に都市部の人に向けた「田んぼのオーナー制度」などを行っている。(平成26年の地震被害により用水路が破損し現在は休止中)

伊折地区の中心となるのが3年前に小谷村が修復をした「ゆきわり草」。築150年の古民家を今は農山村体験交流施設として、宿泊もできる体験館となっている。
毎年村の観光協会などが主催して行う「雪中キャベツの収穫体験」や、夏はミニトマトジャムつくり、一時ブームにもなったわら細工の「犬つぐら・猫つぐら」作りなどの体験メニューの場となるここ「ゆきわり草」で、今シーズンの雪中キャベツについて坂井さんに話を聞いた。

「今年のキャベツは例年になく大きくなっている。普通なら10月頃から霜がおりて冷えてきて、11月に降り始めた雪が根雪になるけれど、今年は暖かくて雪がまだないからかいつになくキャベツが成長した」
雪中キャベツは元々15年ほど前に同じ小谷村内の北小谷地区で細々と作られていたそう。大玉な種類のキャベツを夏に定植し、年明けに雪をかぶった畑から掘り出して出荷する。根を張ったまま雪の下でも生きているため、凍らないように自らデンプンを糖に変えて甘味を増し、実も大きく締まる。
「村内でも北小谷だけじゃなくて伊折でも雪中キャベツを作り出したら、(他の地区でも)みんな真似して個人的に作り始めたよ。儲かる儲かると思ってるのかな」
一番の特徴「雪の中から収穫する」にはもちろん手がかかる。昨シーズンの収穫は2メートル近くの積雪の中から、重機を使って雪をどかしてから、スコップで掘って収穫をした。

「収穫するのはここの三人でやるくらい。それで雪が多く積もってる時は俺が重機をやっているから、スコップを持って掘ったりできない。若い人たちに手伝ってもらってもいる。それも地元の人じゃなくてみんな都会から来た人。この周辺に家を買ったりした人たちがやってくれる。あとは農大の子たちもいるから。」
東京農業大学の学生らが伊折地区の古民家を借り受け、生態系の保全・復元の技術開発への生態学の応用を研究しているという。

年末年始に降った雪がキャベツに被り、現在は雪中キャベツとして甘味を蓄えている状態となっている。今年も無事に味わえることができそうだ。